新年の上海見聞 ~日本はこれからどう中国市場に向かうべきか?

2025-01-16

新年の間、上海に十日間ほど滞在しました。

街には何回も出かけてみました。

人々の表情には、コロナ禍前の活気を依然として取り戻していないように感じます。

 

●タクシードライバーから聞いた世相

 

どこの国もそうですが、タクシードライバーとの何気ない会話から

一番、世相をよく見えてきますね。

 

上海では、タクシードライバーはまた特に増えています。

中国は、スマホのアプリでタクシーを呼ぶ仕組みが主流。

アプリに登録すれば、誰でも簡単に「タクシードライバー」を始められます。

 

タクシードライバーが増えているのは、

これまでの仕事を続けられなくなった人が増えたからです。

 

海外向けの輸出商品を作っている工場が閉鎖されたとか、

経営者が工場を東南アジアに移転させたとか、

不動産バブルがはじけ、それ関連の仕事を失ったとか、、、

 

以前の仕事を続けられなくなり、生計を立てるために、

とりあえず手につけやすいタクシードライバーをやってみよう。

上海のような大都市にはまだタクシー需要が他より多い。

こう思って、上海にやってきて、タクシードライバーを始めた、

このような人が多いのだ。

 

●激しさが増す“内巻(ネイチュアン)”

 

誰でも簡単に始められるというのは、

なかなか儲けにくいということでもあります。

タクシーを呼ぶアプリが増え、業者間の競争が激しい。

ビックデータ解析が進み、客を呼び込むため、料金体系が安くなる一方。

 

中国の流行語でいうと、「“内巻(ネイチュアン)”」、

限られたパイを奪い合うための、内部の激しい不条理な生存競争、という意味です。

「もうやってられない」と、ドライバーたちの嘆きが嫌というほど耳に入ってくる。

 

●久しぶりに戻ってきた外国人観光客

 

明るいニュースもないわけではない。

たとえば、外国人観光客が目に見えて増えています。

2022年に上海はコロナ感染拡大対応のロックダウンの後、

外国人が本当に一気に消えたように感じますね。

昨年、一昨年に上海の浦東空港を通るたびに、

外国人の姿がほとんど見かけない、閑散とした空港を異様に見えていました。

ただし、中国はここ最近、40か国ほどに対して短期滞在のビザ免除を打ち出し、

それを受けて、徐々に外国人が戻ってきたように感じます。

 

上海の浅草ともいえる、観光地の豫園には行ってみましたが、

欧米人観光客がだいぶ戻ってきました。

ここ最近は、「週末に上海で過ごそう」というのが韓国の流行となり、

上海の街頭に韓国若者が殺到したことも話題になりましたね。

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(写真 2025年元日の上海・豫園)

 

上海市が次々に出してきた不動産購入促進策も少しずつ効果が出てきたか、

最近は市内の中古マンションを見て回る市民も増えてきています。

 

●なぜ、サムズクラブが中国で一人勝ち?

 

「中国は、今はとにかく景気がよくないから、何をしてもしょうがない」

こう思う方が多いかもしれないが、

しかし、ウォールマート傘下のサムズクラブは、中国で絶好調です。

中国に46店舗、上海に5店舗が営業していますが、

近くまた上海では新店舗のオープンを予定しています。

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(写真:上海のサムズクラブ)

 

日本でも今が人気のコストコと似たような有料会員制スーパーです。

年会費も商品も安くないが、行ってみるといつも激しい人込み。

生鮮食品からお菓子、飲料、スキンケアやヘルスケアなどの日用品まで販売しているが

選び抜かれた商品で、健康や安心・安全など、品質の良さが売りなので、

2桁増収が続いています。

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(写真:上海のサムズクラブの店内)

 

●中国系スーパーも利益改善してきた

 

中国のローカル・スーパーは、一般的に

「“内巻(ネイチュアン)”が激しく」、元気がよくないのがほとんどだが、

その中で、ネット通販最大手アリババ傘下の盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)は

昨年から2桁増収になったことが話題を呼んでいます。

 

盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)も、サムズクラブのように

農家と直接提携し、世界中から良い生鮮食材の仕入れ、

安心・安全や健康が魅力ポイントです。

郊外に立地することの多いサムズクラブと違って、

都心の立地が多く、宅配などもよりスムーズに対応していて、

利便性の点においてはさらに勝っています。

 

中国の消費者は、確かに今、財布の紐がかなり固いかもしれないが、

ただし、実際は、安心、安全、健康などの価値のあるものに対しては

むしろ今まで以上に求めています。

 

●成熟した中国の消費者が「価値」を求めている

 

サムズクラブで販売される食材は、

「中央政府の要人クラスに特別供給されている食品と同じ厳しい基準で選ばれたもの」

こういう口コミが中国の中産階級の中で広がっています。

 

「“内巻(ネイチュアン)”の競争」が激しく、コスト削減に走りがちなご時世。

だから食品の安全性に対する不安が高まっています。

成熟した中産階級の足がサムズクラブに向かうのも理解できます。

 

盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)は、サムズクラブの基準も取り入れ、

より中国人好みの商品もメーカーと共同開発、

さらにスピーディな宅配対応なの利便性も提供しています。

最近は中産階級に止まらず、それを庶民層まで広げるように努力しています。

だからここ最近急速に利益が改善したわけです。

 

●日本企業も中国消費者の新しいニーズに対応しよう

 

日本はコロナ禍の後でも、新しい商品やサービスが増えてはいますが、

しかし中国現地で販売している日本製品は、

コロナ前の商品が多く、中国人に飽きられても仕方がない。

 

「中国の景気がよくない」という側面ばかりみるのではなく、

むしろ中国の消費者がより成熟してきているし、

より価値の高い物を求める機運が高まったことをもっと知るべきでしょう。

今こそ価値の高い日本製品を中国人向けにアピールし

販路拡大を図るべきではないでしょうか。



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