2023-03-16
今年3.8女性のショッピングデー、
天猫の化粧品が大幅売上げ減、何が起きたのか?
ここ数年、注目されている中国のネット通販セール。
冬のダブルイレブン、夏の618。全体の売上げ規模などは、
中国の消費や経済を読み取るバロメーターのように見られている。
これらより先の3月8日に、「女性の日」と名付ける割引セールがある。
その後の夏や冬の大規模セールの先陣を切るような存在だ。
3月8日は、日本ではさほど有名でないが、世界的には、女性の日として知られている。
中国最大ネット通販の天猫(Tモール)が数年前に、この日を「女王節」と名付けて、
618とダブルイレブンに加えて、第3の割引セールとして展開したのだ。
今年の女性の日のセールは、例年に比べると、ほとんど話題になっていなかった。
いろいろ調べてわかったが、今年は全体的にかなり伸び悩む結果になった。
まず通販最大手「天猫」の場合、化粧品の9割ほどが、
去年の3月8日より売上げが低下している。
特に海外の有名化粧品ブランド、
たとえばエスティローダー、ラメール、キールズ、シスレー、
さらに日本の資生堂、韓国のソルファスなどは、いずれも売上げが大幅に減少、
中では昨年より50%以上も減っているブランドもある。
コロナの間にずっと成長しているWINONAなどの中国系の化粧品ブランドも天猫での売上げが昨年より減っているのだ。
唯一、PROYAという近年、躍進している中国系化粧品ブランドは、
去年の3月8日より50%増を実現しただけなのだ。
下記の表は中国の「聚美麗」という化粧品メディアが集計した
今年3月1~8日までの「女性の日」1週間セールの天猫の売上げ。
売上げが去年同期より増えたのはPROYA(珀莱雅、56%増)、ゲラン(23%増)、クラランス(31%増)など。
ラメール(47%減)、ヘレナ(39%減)、SK‐Ⅱ(25%減)、中国ブランドのWINONA(48%減)が大きく減少。
資生堂(主にアルティミューンやリバイタル、57%減)、アネッサ(42%減)、デコルテ(22%減)、フリープラス(20%減)など日本のブランドも軒並み売上げ減少。クレ・ド・ポー ボーテだけが9%増。
(出所:中国の「聚美麗」という化粧品メディアから引用)
天猫の不調の一方で、ドゥイン(中国のティックトック)の売上げは伸びている。
ドゥインで旗艦店を設ける化粧品ブランドが増えている。
3月8日の売上げをみると、旗艦店と他のライブ販売の合計額では、
ヘレナが昨年の女性の日の倍以上の売上げ達成、
エスティローダーも倍増、SK-IIや韓国の「The History of Whoo」も増加。
ただし、資生堂など日本のブランドは、ドゥイン内での売上げはまだまだ少ない。
ヘレナやエスティローダーなどの欧米系有名ブランドは、
ドゥイン内での売上げは大幅に増えているものの、
まだ天猫で減っている分を補えるほどまでに至っていないので
全体的にみると、やはり今年の女性の日の化粧品売上げはかなり伸び悩む結果となった。
(出所:中国の「聚美麗」という化粧品メディアから引用)
今年の「女性の日」の売上げを調べて思ったのは、
ドゥインのような、毎日、手軽にライブから衝動買いできるプラットフォームができてしまうと、
天猫のような、毎年決まった時期だけの割引セールは、次第に魅力が低下していくのだ。
そうなれば、天猫が、ドゥインを上回るほどの強い施策を打ち出せなければ、
女性の日だけでなく、この後の618そしてダブルイレブンでもますます苦戦が強いられるだろう。
今年の女性の日に唯一、売上げが顕著に伸びたのはPROYAだが、
PROYAが伸びている理由はとても簡単。
天猫のナンバーワン・ライバーの「オースティン」にたくさんライブ販売を依頼したからだ。
逆に、それ以外は、海外ブランドだけでなく、中国国内の多くの化粧品ブランドも、
有名ライバーに大規模な割引ライブ販売の依頼をあまりしなくなったがために、
セール期間中の売上げも大きく低下した、ともいえるのだ。
有名ライバーの要求に応じて、どんどん安売りセールをすれば、
売上げは上がるが、ブランド側としては儲からない。
このような悪循環を打ち切るため、
有名ブランドは、次第に有名ライバーに依存しない姿勢がますます鮮明になってきているように受け止めることもできる。
そのため、セール期間中の売り上げを犠牲しても良いわけだ。
ナンバーワン・ライバーのオースティンにも徐々に変化が起きている。
昨年6月にいったん、すべての公の場から姿を消されたオースティンが、
9月に復帰できたが、昔とは打って変わって、「買え!買え!」と叫ぶ姿を隠し、かなり穏やかな普通のライバーになった。
さらにここ最近は、オースティンのライブと言いながら、
新人の女性ライバーが中心に座り、オースティンが後ろに座り補佐役に廻っている。
このようにオースティンをメインに見る日もどんどん少なくなっている。
1人か2人のスーパーライバーに依存する大規模の割引セールは
次第に存在感が薄まっていくのと同時に、
今が流行りのドゥインのようなショットムービアプリにおいて
ブランドの旗艦店が自ら毎日ライブ販売して売上げを立てていく。
時代の移り変わりを感じながら、安易な割引セールに依存せず、
徐々に真のブランド価値で勝負する時代がなってくるのだろうか、
と今後の推移を注目したいのだ。