2007-12-17
2006年に上海に上陸したZARAとH&Mという2大欧米のファッションブランドは、上海で旋風を巻き起こしている。その様子をまとめた拙稿をSMBCの中国ビジネスクラス誌08年1月号に掲載された。
上海には欧米ブランドのニセモノ市場が存在していることが、日本のメディアに何度も取り上げられているが、実際、ニセモノ市場の主な顧客は中国人ではなく、中国を訪れる外国人なのだ。
欧米ブランドのニセモノといえば、以前は、上海の「襄陽路」に集中している。「襄陽路」が取り壊される直前の2年前に訪れたことはあるが、大きなリュックにいっぱい詰めて懸命に値引き交渉しているのは、ほかではなく、欧米人だ!
逆に中国人はニセモノよりも本物の欧米ブランドを買いたがる。上海や北京の中流層は、香港に行って欧米ブランドをまとめ買いをしている。中国の消費者を良くわかったのはZARAとH&Mだ。両社は06年に相次ぎ上海に進出。特にH&Mは日中両国に同時期に進出したが、日本では渋谷でわずか1店舗開設に対して、上海の繁華街ではいきなり3店舗オープンの勢いだ。中国市場に力点を置いているのは明らか。
そのZARAとH&Mのお店の前に、おっしゃれな上海っ子が毎日、長蛇の列を作って並んでいる。繁華街に3店舗も集中し、ZARAよりさらに平均価格20%も安いH&Mはの人気がさらに高い。「今の上海では、長蛇の列をみえるのは、株売買の銀行前か、H&Mの店前のどちらかだ」といわれるほどだ。
H&Mは多品種少量生産。新商品の情報を知ってから少しでもお店に足を運ぶのが遅れると自分に合ったサイズの服は売り切れになるのもしばしば。だから上海っ子は、H&Mの店に足しげく通うのだ(中国時報2007年12月16日の報道より)。
実際、ZARAもH&Mもわずかながらの商品がスペインやイタリアからきているだけで、ほとんどの製品はメイド・イン・チャイナである。デザインだけはZARAやH&Mの本社でやっているだけだ。
それなら、欧米高級ブランドのコピー商品を買うのとさほど変わらないと思うだろうが、なのに上海の若者は「ニセ・ブランド」にまったく目も配らず、H&Mの前の長い列をつくって並んでいる。
上海市がニセ・ブランド市場の「襄陽路」を取り壊した後、ニセブランドショップが上海南京東路の「淘宝城」に集まるようになった。今は東洋人の顔をしているとこの「淘宝城」に入りづらい気がする。なぜならここの主要言語は英語。そして白人や黒人は親族や友人同士のグループになって巨大スーツケースやリュックに必死にニセブランドを詰めている。
欧米のメディアと政治家は中国のニセモノブランドを声高に非難すると同時に、欧米からの観光客が中国のニセモノ売り場でリュックやスーツケースにニセモノブランド商品を懸命に詰めている。
そして中国の若者はZARAやH&Mの店舗前で長蛇の列を作り、「カッコ良い」のいう理由でアメリカでの販売価格より数倍も高いアディダスやナイキを手に入れたくてしょうがない。
「中国で売りたいですが、商品がコピーされるのが心配です...」。日本企業からよくこんな相談を持ちかけられる。日本のメディアに毒害されている日本の企業はまったく中国の消費者を理解していないといわざるをえない。