変化の速い中国市場でのマーケティング【考】

2019-03-14

1.おこなわれているマーケティング活動

市場調査をして今後の市場を予測し、市場細分化を経て、対象市場で自社品を買ってくれそうな顧客ターゲットを設定、そこへ向けた自社品のポジションを決め商品情報を発信する、、、これまでおこなってきてそれなりの効果が出ていた従来のマーケティング手法・・・それが中国市場を相手にすると何故かうまくいかない、、、そんな声を日系企業のマーケターの方々から聞きます。

一方で、中国市場で上手くいっている企業もあります。この違いはいったい何なのか?
中国市場は、日本に比べ短期間に急成長してきて、そこへ投入される商品の種類は世界中から集まるため非常に多く、また多民族性、政治的影響、沿岸と内陸など地域による消費者意識・ニーズの違い、世代格差、収入格差、ダブルインカムやサイドビジネスなど複数の収入ルート、など複雑に絡み合っています。
中国で市場調査をしたことのある人なら、月給10万円くらいの人がエステに行ったり、買物をしたりで毎月同額以上使っていて、家賃や子供の養育費はどうしているのか、と疑問をもった人も多いと思います。
そうした状況のため、市場をうまく把握できない、予測どおりいかない。。。市場セグメントやポジショニングは複数の類似品が常に世界中から流れ込んでくるため把握が追い付かず、政策変更の急な発表があり市場が想定外の方向へ動き出し、さまざまな準備をしてやっと商品情報を発信する段階まで来たのにPDCAのDを動かす頃にはPを作成した前提が別モノになっていた、などということはよく聞く話です。

今年初めにスタートしたEC法は可決されてから4カ月で施行というスピードだったため、市場予測をどう修正するか、準備していた販促をどうしたらよいのか、悩まれた企業の方も多かったのではないでしょうか。

2.変化の速い市場で気になる米国発の新しい考え方

中国市場で、欧米や韓国の企業は日本企業に比べて成功しやすいようです。こうした企業のマーケティングの特徴は、比較的短いスパンに注力した販促策を打ち、それによる市場の変化を観察して、また次の施策を打ってくることです。

数年前、米国バージニア大学の教授が書いた翻訳本が日本で出版されました。「エフェクチュエーション」という題名で、複数のマーケティング研究団体でとりあげられ話題になりました。
「エフェクチュエーション」とは辞書には実施・遂行とありますが、成功した起業者の思考という意味で使われています。これは成功した複数の起業家を研究対象として、共通していた意思決定の方法について書かれた本です。スペースシップワンのバートルータンやスターバックスのハワードシュルツなどが事例として挙げられており、研究対象は米国の起業家を対象としていますが、この内容が変化の速い中国市場でのマーケティングを考える上で参考になるのではないかと思っています。

従来のマーケティングは、市場を予測して目標を設定し、それに沿った販促を考え、KPIを設定し、販促実施後に販促計画を見直すというコトラーの提唱した方法を実施してきました。

計画内容を改善していき汎用化していく、実験科学的アプローチに重点が置かれていると思います。

この手法は、市場の変化はある程度ゆるやかで法則性があり、売上の構成要素が把握でき、未来予測が可能という考えが前提にあります。

しかし、3年売れていればロングセラー商品といわれるほどプロダクトライフサイクルが短く、政策がコロコロ変わる中国市場ではこのコトラーのSTPマーケティングがどうもしっくりこないことが多いように思えます。

エフェクチュエーションでは最初から、市場は常に変化しており、不安定・不確実・複雑・曖昧なので未来を予測することに注力はしません。

そのため、初めにきっちりした目標設定はせず、手元にあるツールや技術などのリソースでどのようなことが実行できるかを考え、それらを少しずつ試しながら、その試す過程で関わるさまざまな外部との相互作用を取り込みながら、そのときどきの状況変化を観察して、より良い結果になるように柔軟に動いていきます。

一期一会の現象にも注目し、その裏にあるニーズを探りながら、市場の見方・考え方を汎用化していく、観察と仮説設定を中心にした野外科学的アプローチに重点がおかれていると思います。

言い換えると、従来は市場機会を発見して目標を設定しそこへ向かうという考え方でしたが、エフェクチュエーションでは市場機会を手持ちのリソースを使って創り出し、市場の変化を観察しながら適応させていく、という違いがあります。

この本を書いた米国バージニア大学の教授は中国市場を意識したわけではないですが、中国市場でうまくいっている欧米や韓国企業の考え方に似ていると思いました。変化の速い中国市場でのマーケティングを考える上で、今後もさらに調べていこうと思っています。

TOP