2019-02-14
前回のメルマガでは、最近の中国人バイヤー(代理購入者)の売り方の変化について述べさせていただきましたが、このこととセットで「日本の商品がバイヤーに購入された後は、どのように中国消費者のもとへ流通していくのか?」という質問をよく受けますので、このことについても少し触れさせていただきます。
購入された日本の商品は、日本から中国へはどう配送されるのか、そして中国国内ではどうなのか。
まず日本から中国への配送ですが、個人や少人数でバイヤーをしている人はEMSで中国へ送ることが多いです。中には、バイヤーの親玉みたいな人がいて、彼らが個人や小規模で動いているバイヤーを使って商品を買い集め、コンテナに積んで大量に船で中国へ運ぶケースもあります。
最近では、バイヤー本人は注文をとるだけで、注文がとれると、人気商品を買い集めて中国国内で保管している業者へ連絡をとり、そこの倉庫から注文者の手元へ商品を発送する、という分業体制をとる仕組みも出てきました。
中国国内の配送は今では、どのような田舎でも中国内に入ったあと3日もあれば商品は届きます。その理由のひとつは、中国全土にはりめぐらされた高速道路と高速鉄道にあります。
2008年、世界的にはリーマンショックがあり、中国では経済成長が鈍化し減速感が強まった時期、温家宝首相は4兆元の財政出動をして中国内の道路網と鉄道網を整備しました。これにより物品の配送時間は大きく短縮しました。いまはまだ高速道路は有料が多いですが、今後は順次無料化が予定されており、さらに配送は便利になっていくでしょう。
そして、もうひとつ理由があります。中国は人件費が高騰しているとはいえ、地方から都市部へ出稼ぎに来ている人たちの人件費はまだまだ低いです。これがネット通販の盛り上がりによる商品配送の需要と結びついて、安く配送できる業者がとても多く存在します。これら配送業者はスマホのアプリで連携し、利用者へ便宜を提供しています。各地域の配送業者どうしはリレー方式で地方まで簡単に物を運べる流れができており、中国内の配送はとても便利になっています。
こうした配送状況が、バイヤーのビジネスを活発にしており、また越境ECなどのビジネスも活発にしています。
先日、中国沿海部の景気が今後、安定、もしくは低下してくると、バイヤーの活動はおとなしくなるのではないか、という質問を受けました。前回のメルマガで、東京には日本在住のバイヤーが多く、大阪は中国からの旅行者型バイヤーが多く、バイヤーの種類が異なるという話をしました。これと関係しているのですが、中国の内陸部に高額な日本品を購入する消費者が多いことはあまり知られていません。
内陸にも交通網の発達などにより地価の高騰で富裕層がいます。彼らの日本品の買い方は、東京に住む中国人バイヤーに購入依頼をし、直接、配送してもらう方法が多いです。その理由は、、、
越境ECの場合、沿海部は商品代金に送料が込みになっていることがほとんどですが、さすがに内陸になると広い中国では越境ECでも配送料が加算されてしまいます。そこで内陸の人は日本に住む中国人バイヤーへ注文して直接送ってもらうほうが安上がりになるのです。ちなみに、沿海部の人たちは越境ECや旅行者型バイヤーの利用が便利なので多用し、沿海部でも上海など日本へ行きやすい地域に住んでいる人たちは直接訪日して日本品を買ったり、訪日する友人に購入を依頼することが多い傾向があるようです。
それと、中国の沿海部と日本では経済格差は小さく収入も差がなくなってきているのですが、中国内陸と日本では格差があるため、全体的には内陸には富裕層もいますが中流以下の人が多く、この中流以下の人たちで日本に在住し稼いでいる人が多い。先に述べたように日本に在住しているバイヤーは東京圏に多いですが、そのほとんどは内陸の中国人です・・・つまり日本に住む中国人バイヤーは内陸の人が多く、内陸の富裕層とつながっている人が多い。そのため、内陸の富裕層は日本品の代理購入を在日のバイヤーへ頼む、という図式があります。
これまで述べたとおりインバウンド市場は中国人バイヤーの存在が大きいので、この人たちとよくコミュニケーションをとり、彼らを理解し、中国における沿海部と内陸部の消費者向け施策を打つのが有効と思います。
例えば、中国沿海部の消費者は日本品の情報がたくさん入ってきますが、内陸部はあまり入ってきません。こうした状況を考慮して、中国内陸部とつながっている東京在住のバイヤーから商品情報を内陸部へ流せば、内陸部の富裕層に自社品を購入し使ってもらえる機会が増えるでしょう。