2013-11-07
韓国ネイティブの私は、社内では中国関連の仕事だけではなく、韓国関連の仕事も担当しています。そんな視点も混じえて、なぜ、韓国の化粧品が今、中国で人気が伸びているかについて、お話したいと思います。
■ 韓国コスメは今、中国で人気が高い
ChinaIRNという中国の大手調査会社の今年(2013年)8月の発表をみると、中国市場での韓国化粧品の成長率は、日本化粧品を抜いてトップになりました。また、市場調査会社ユーロモニターによると、昨年(2012年)の中国化粧品市場トップ10社のなか、「愛茉莉太平洋集団」という会社のスキンケア製品が中国で売上が前年比34%と最高の伸び率を実現したわけです。
「愛茉莉太平洋集団」は韓国最大化粧品メーカーの「アモーレパシフィック」の中国名。その伸び率は、中国でシェア1位のロレアル(同増加比13%増)、2位の資生堂(12%増)、3位のP&G(5%増)などの化粧品大手を大きく凌駕しています。
この韓国コスメの中国での快進撃にはどのような要因があるのでしょう?
いろいろなポイントはあると思いますが、日本の施策と比べると特に以下の3つのポイントが注目されます。
■ 理由その1.高品質で安全かつ価格が手ごろ
前述の「アモーレパシフィック」社が中国で発売している人気ブランドの一つは「ラネージュ」。中国名は「蘭芝」と言います。20代の中国女性に高い人気を誇っています。私は韓国に戻った時に、「ラネージュ」をいっぱい買った中国人観光客がスーツケースに詰め込んでいる光景を何度も見ました。「どうしてこんなにいっぱい買うの?」と聞くと、「ラネージュのような韓国コスメは品質も安全性もよく、しかも価格は手ごろだ」とうれしそうに言ってくれました。
「高品質で安全」といえば「日本製」と連想する人が多かったですが、今は韓国コスメも安全性や品質で高く評価されているのです。そして、安全性と品質が高まったにもかかわらず、韓国コスメはなんと言っても「買得感」があるのです。
中国の化粧品市場をみると、1個当たり400元(約6,400円、1元=16円で計算、以下同)以上になると、高価格帯に入ります。欧米の高級ブランド、そして日本の有名ブランドは、この高価格帯に入るものが多い。対して「蘭芝」を初め人気の韓国コスメは、1個当たり100(約1,600円)~300元(約4,800円)と、中価格帯であり、普通のOLが手軽に買える価格です。中国の女性にとって「財布にやさしい価格」です。
■ 理由その2.気前の良い販促で中国人女性の心をゲット
ソウルの明洞(ミョンドン)はご存知ですか?東京でいう渋谷のような若者の多い街です。そして、化粧品販売の激戦区です。そこでは、他の国ではあまり見られない独特な販売が見られます。何か化粧品を一つ購入すると無償サンプルを山のようにつけてくれるのです。どこの店でも店員が袋いっぱいサンプルを入れてくれるので、時には製品を購入せず、サンプルをもらうことだけで大満足して店を出る人もいるくらいです。
この感覚は、韓国のレストランに行ったら無料の前菜がいっぱい出てくることと近いですが、これは韓国人に共通した、「情」を分け与えることで、その人との関係を継続していきたい、という考え方からきています。この韓国コスメの「気前良い」販促は、中国人女性にとって好ましいポイントになっています。
■ 理由その3.韓流スターが韓国コスメの伝道者
韓流スターは今、日本でも人気が高い。女優の「ソン・ヘギョ」、アイドルグループ「少女時代のユナ」、歌手の「キム・ヒョンジュン」等々、こうした韓国の人気女性タレントは、韓流スターに詳しい方にはすぐ分かる名前でしょう。
実際に中国の百貨店にいくと、彼女たちの大きなポスターはどこでも目に入ってきます。韓国の化粧品は彼女たちを中国での広告にも積極的に活用しているのです。中国では、韓流ブームは日本よりも盛んです。人気の高い韓流スターは、若い女性にとってはカリスマのような存在。彼女たちが愛用している化粧品は、すぐにネット上の口コミの力を借りて、中国の若者の中で流行となるわけです。
中国でも「上戸彩」、「浜崎あゆみ」など、日本のエンターテイメントや芸能人のファンは多いが、ただし韓流ブームほどの大きな流行にはなっていない。そのため、日本の芸能人を起用しても効果には限りはあるかもしれない。
韓国コスメはPRに韓流スターを起用するのは、彼女たちが芸能人だからというより、むしろ中国女性に対するカリスマ性や影響力に注目しているのでしょう。今はネット口
コミで商品が売れる時代。日本の化粧品は中国でファンを増やしていくための一つの有効な方法は、日本の化粧品と相性が良い「中国の消費者にとってのカリスマ」を上手に見つけて活用していくことでしょう。