中国のコカ・コーラになぜ不思議な言葉が次々に現れる

2013-10-10

先日、中国に出張した際、スーパーでふと目にしたコカ・コーラが面白かったです。いつものトレードマークの真っ赤なパッケージに、デカデカと色々な言葉がプリントされています。

「白富美」、「高富帥」、「文芸青年」、「yang气美女(酸素美人)」...
日本人には意味不明な言葉ですが、中国の若者が皆、面白そうに手にとって買っていきます。みなさん、ちょっと気になりますね。

■「白富美」に「酸素美人」、若者言葉が表す中国の世相

実は、これはこの夏に、コカ・コーラが中国でやり出した新しい販促活動で、若者言葉をわざとラベルにプリントしているわけです。どんな言葉かと、まずいくつご紹介させていただきます:

「白富美」(色白で育ちのいい美人)
「高富帥」(背が高く高所得のイケメン)
「酸素美人」(透明感あり、いるだけで場が和む美人)
「文芸青年」(文学青年)
「有為青年」(バリバリ頑張る若者)
「積極分子」(アグレシッブな若者)
「(口苗)星人」(ニャン星人、猫バカな人)
「小蘿莉」(ロリータ、可愛い女の子)
「隣家女孩」(隣の女の子のように親しみやすい女性)
「天然呆」(天然ボケ)
「純爺門」(男の中の男)
「粉糸」(芸能人の追っかけファン)
「月光族」(月給を一ヶ月で使い切ってしまう若者)、、、
といったような言葉です。スーパーでお客さんをよく観察していると、ラベルに「白富美」の字があったコーラを手にとったのが本当に色白で育ちがよさそうな美人、そして「小蘿莉」の字があったコーラを手に取ったのはまさに可愛い子。一番多いのは、友達に合ったコーラを買ってあげる若者。たとえば「天然ボケ」の友人がいたら、「天然呆」の字があったコーラを買ってみんなの前で渡したら、「その通り」とみんなの大笑いを誘う、といった具合です。 

■「80後(バーリンホウ)」で一括りにできなくなった若者の細分化

ところで、どうしてコカ・コーラが今、中国でこんな販促をやっているのでしょう。実は、中国も健康意識がどんどん高まり、コーラ離れの若者が続出しています。そこで、これまでずっと飲料市場のトップシェアを誇っている

コカ・コーラは奇策を打って出たわけです。コカ・コーラの中国での売り上げは、今夏に前年同期比2割増になっています。この販促はひとまず奏功したようです。

実は、私は、このコカ・コーラの販促は、日本企業にも色々示唆があるのではないかと思っています。

中国の消費市場は若者が主役を担っています。これまで日本のメディアも「80後(バーリンホウ)」、「90後(ジョウリンホウ)」などの中国の流行語を良く取り上げましたね。それぞれ「1980年代生まれの世代」、「1990年代生まれの世代」の意味で、すなわち20代30代の若者層です。

しかし、変化の激しい中国では、もはや「80後」や「90後」も古い言葉。どんどんと細分化が進んでいて一括りにできなくなったのです。若者は、所得や学歴が違えば、収入も消費嗜好も分かれます。上記の若者言葉はまさにこういう世相を反映しているのです。日本企業もこうした変化に上手に対応すれば、自社商品にふさわしいターゲット層を見つけ、そしてその心をうまく掴むことができるでしょう。

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■「酸素美人」は、エコや健康に敏感な先端層

例えば、今、日本で流行りの健康系や自然系の商品を中国で広げようとしたら、まずは「酸素美人」や「文芸青年」を味方につけるべきです。彼らは学歴が高く、エコや健康に敏感だからです。上海には、「環保(環境にやさしい)」を訴え、自然素材にこだわるとともに、日本の最先端のデザインセンスを上手に取り入れた中国系のファッションブランドがあります。

日本円にしたら一着数万円でかなり高額にもかかわらず、実によく売れています。デザイナー出身の社長は若者の先端層に芽生えたエコ意識を先取りして大成功したわけです。

仕事の効率を上げる製品なら、「有為青年」(バリバリ頑張る若者)と「積極分子」(アグレシッブな若者)に照準を当ててアピールすれば、支持を集めやすいでしょう。日産が中国で販売している「ヴェヌーシア」は、内陸部で売れています。中国名は「啓辰」、「人生の新しいスタート」という意味。内陸で起業を目指す「有為青年」「積極分子」にとっては、まさに心に響く言葉です。「酸素美人」「文芸青年」「有為青年」「積極分子」...

こうした若者層は、これからの成長が期待できるミドル・クラス。「酸素美人」や「文芸青年」は生活の質を重視し、クリエーティブな職業において才能が開花する人が多いでしょう。「有為青年」や「積極分子」は上昇志向が高く、努力すれば将来、社長になる者もいるでしょう。

■欧米ブランドを好む「白富美」「高富帥」、「カワイイ」大好きな「(口苗)星人」「小蘿莉」  他の言葉もみてみましょう。

「白富美」と「高富帥」とはどんな若者なのかご存知でしょうか。これは中国の別の流行語で言えば、「富二代」のような者が多い。すなわち親が金持ちで、もともと育ちがよくお金には困らない若者です。彼らには欧米の高級ブランドを好む者が多いので、日本の商品が彼らの心を掴むには、商品価値に加えて、高いブランド価値も必要不可欠です。

他にも、たとえば動物好きな「(口苗)星人(猫バカ)」、可愛いモノに目がない「小蘿莉」(ロリータ、可愛い女の子)や「粉糸」(芸能人の追っかけファン)などには、日本のアニメーション、芸能人、キャラクターのファンが非常に多い。日本の芸能人や漫画キャラなど、いわゆる「カワイイ文化」を活用した商品は彼の中では大きなニーズが存在しているに違いないです。「隣家女孩」(隣の女の子のように親しみやすい女性)、「天然呆」(天然ボケ)、「純爺門」(男の中の男)、「月光族」(月給を一ヶ月で使い切ってしまう若者)などは、大衆層で、ボリュームゾーンに属する若者です。彼らは、「有為青年」・「積極分子」・「酸素美人」・「文芸青年」のような、トレンドリーダー層に影響を受けやすい。彼らの心を掴むには、分かりやすさ、単純明快さが必要不可欠です。

■中国の若者文化を知り、彼らを味方につけよう

  中国で上手にやっている日本企業もないわけではありません。日本で若い女性向けに「カワイイ系」の下着を販売して人気を博した企業が、上海でもお店を展開しています。私たちは、同社商品名の中国語作成にかかわったことがありますが、複数の商品シリーズにはなるべく今の中国の若者言葉を上手に活用し、萌え萌えのネーミングを作り上げました。上海のショッピングモールにある同社のお店を見にいたことはありますが、日本のカワイイ文化を前面に押し出したそのお店は上海の若い女性に人気のようで、週末にはごった返しの状況です。中にはまさに「酸素美人」もいれば、「小蘿莉」もいたわけです。私たちの社員も言葉の作成に貢献した商品のカタログは、次々にやってくる来店客がどんどん手にとっているのをみて、ちょっぴりうれしい気分です。

このメルマガをお読みになった皆さん、もし中国向けの商品開発やプロモーションに、若者文化をもっと活用したいなら、ぜひ弊社にも声をかけてください。お力になれば幸いです。

最後に、実は、私も若者言葉をプリントしたコーラを買いました。どんな言葉をプリントしたコーラを買ったかは、お目にかかったことがある時、個別にお教えしましょう。

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