2015-09-02
中国「人民日報」海外版の「日中新聞」に弊社代表の取材記事を掲載しました。
中国人観光客の「爆買い」を味方につけろ
http://www.infochina.jp/jp/index.php?m=content&c=index&a=show&catid=16&id=8198
㈱中国市場戦略研究所代表取締役の徐向東氏に「爆買い中国人に売る方法」について聞いた。
㈱中国市場戦略研究所代表取締役の徐向東氏
中国人観光客の中「爆買い」を味方につけろ
中国人観光客による「爆買い」が話題を呼んでいるが、何となくムード的に捉え、実態について正確に把握していないのではないだろうか。実態を正しく掴んでいなければ、その「爆買い」を味方につけることはできない。そんな疑問が出てきたおり、日本経済新聞出版社から『爆買い中国人に売る方法~これが正しいインバウンド消費攻略』という書籍が出版された。そこで著者の㈱中国市場戦略研究所代表取締役の徐向東氏に「爆買い中国人に売る方法」について聞いた。
◆「爆買い」の原動力は「スマホ」
現在、日本で中国人観光客による「爆買い」が大きな話題になっており、驚きを持って迎えられている。「爆買い」はどのように引き起こされているのか、中国人観光客は商品を買う際にどのようにして商品を選んでいるのかを正確に把握されていないように思う。
「爆買い」といっても、全ての商品が売れているわけではない。売れているものと売れていないものがあることに着目しなければならない。そこで中国人観光客はどのようにして商品情報を得ているのだろうかという疑問が出てくる。スバリ結論からいえば「スマホ」を操作しながら買物をしているのだ。
「爆買い」に実態について日本人は正確に把握していません。「爆買い」の真相について日本人は正しく理解していません。だから日本人の中国人観光客に対する対応は間違いだらけです。というのは日本人と中国人は全く異なる世界観で生きているからです。
マツモトキヨシの化粧品の売り上げは、中国人観光客が日本人を抜きました。日本には40誌を超えるフリーペーパーが発行されています。しかし、中国人観光客はそれを見て商品を選ぶことはしていません。
さらに店頭で時間をかけて商品を選んではいません。商品を比べて決めるというようなことはやっていません。「スマホ」を操作しながら、どんどん買っているのです。
中国人観光客は、来日する前に買物リストを作ってきます。淘宝(タオバオ)に膨大な情報が入れられています。中国にいるときにすでにその情報をもとに日本の商品を買っているケースもあります。
日本人は日本人同士で情報交換をしていますが、中国人は中国人同士で情報交換をしています。したがって情報が片寄っています。まず、この実態をとらえなければ本当の意味のインバウンドに結び付けることはできません。
情報が片寄っているということは、一部の商品に人気が片寄り、知名度が上がります。つまり、転売しやすい、頼まれやすいというわけです。しかし、数カ月後に機能性やパッケージが変わると、以前から流行していた商品が売れ出します。
◆シンプル・大胆に「訴求」を図れ
中国人は変化が激しいという特色があります。中国では「スマホ」が爆発的に売れてきました。2015年の4億5800万台から2017年には5億500万台に達するといわれています。その「スマホ」を活用して活発な情報交換が行なわれてきました。
WeChat(無料メッセージと通話アプリ)の買物リストを利用して買物をします。日本は検索文化ですが、中国ではそうではありません。日本と中国は情報ツールの位置付けが異なります。中国では検索ではなく、情報をスキャンして欲しいものをゲットするという使われ方をしています。そのスピードに付いていけないので転売業者の活躍の場が広がっています。
中国人にはカッコよくとかキレイにやろうという感覚は通用しません。「POP」一つをとっても「東京人」のセンスではなく、「関西人」のようにドカンとストレート・大胆に表現したほうがよいでしょう。薬の効果についても「9割の人に効いた」という表現の方が訴求力があります。
日本の「健康水」に対して中国人は「神仙水」というニックネームを付けています。それが口コミで拡大しています。つまり、ニックネームが拡大しないと普及しません。赤ちゃん紙おむつ「メリーズ」に中国人は「花王尿不湿」というニックネームを付けています。
日本の炊飯器、化粧品、サプリメントなどが中国人観光客に大変売れていますが、商品名をカタカナで表記しているケースが多いので、中国人観光客には読めません。それで中国人はそれらの商品にニックネームや愛称を付けて口コミで広げているのです。
中国人観光客による「爆買い」が話題となっていますが、正直なところ上手に伝えられているか疑問です。日本の販促では無駄遣いが多いように思えて、いつもハラハラしています。例えば中国で日本の大きな展示会が開催されますと、良質な紙を使ったカラフルなパンフレットが会場に山のように積まれますが、あっという間になくなります。実態は古紙として持っていかれています。良質な紙なので高く売れるからです。
2015年4月の訪日中国人観光客は40万人を超えましたが、中国大陸から香港への観光客は4700万人を超えています。人口の多い国、少ない国、観光客の多い国、少ない国とさまざまですが、訴求方法や文化の違いを考慮して戦略展開をする必要があります。
テレビCMの時代ではありません。ネットや口コミの時代です。日本人は数字が好きです。企画書などは数字で固めます。中国人は変化が激しく、数字をあまり信用しません。したがって中国人観光客に訴えかけるためには日本人の論理でやらないことです。無駄遣いになります。
もはや成熟した先進国では需要は期待できません。人口の多い国の市場に着目すべきです。巨大市場の消費パワーに注目して戦略を練り直す必要があります。例えばユニクロは意思決定が速いことが大きな特徴ですが、APPやWeChatを使って消費者を店頭に誘導しています。日本人は自分自身を変えたがらないですが、変えないといけないということは解っているはず。中国人はシンプルに持っていこうとしますが、日本人は複雑に持っていく傾向があります。
それは技術開発に凝縮されています。日本ではサプリメントは安心・健康にシフトし、新商品が次々と生まれています。消費者に対して販売とコミュニケーションの仕方を考えて作り込みをしようとしています。しかし、相手に届いていません。
例えばメディカル・ツアーということで中国から団体客が来ましたが、順番待ち予約に耐えられずドタキャンしてしまいました。中国人に訴えるには限りなくシンプルにすることが大切です。このようなことを参考に中国人観光客の「爆買い」に対応した市場戦略を練り直すことを提案したいと思います。(談)
【徐向東氏プロフィール】
株式会社中国市場戦略研究所(cm-rc.com)代表。北京外国語大学院卒、北京外国語大学講師を経て、文部省奨学金で日本に留学。日本で博士号取得。日本労働研究機構(現独立法人労働政策研究・研修機構)、中央大学と専修大学講師、日経グループ会社首席研究員、日系コンサルティング会社代表取 締役などを経て、2007年に(株)中国市場戦略研究所(cm-rc.com)を立ち上げ、自動車からIT、飲料、観光、ファッションまで幅広い分野で、 日本企業の中国市場開拓をサポートする実績を持つ。現在、上海でも「上海伝沐商務諮詢有限会社・上海伝慕貿易有限会社・上海伝目広告有限公司」と3つの会社を運営、調査、コンサルティングの他、ネット通販、プロモーションから販売代行まで展開している。
著書:『中国で「売れる会社」は世界で売れる!―日本企業はなぜ中国で勝てないのか』(徳間書店、2006)、『中国人に売る時代!〜巨大 市場開拓の成功法則』(日本経済新聞出版社、2009)、『中国人にネットで売る』(東洋経済新報社、2011)、『中国人観光客を呼び込む 必勝術―インバウンドマーケティングの実践』(日刊工業新聞社:編著、2011)など。
『ガイアの夜明け』『NHK海外ネットワーク』『BSフジ』『朝日ニューススター』などテレビ出演が多く、ジェトロの日系企業経営者研修セミ ナー、キヤノン中国500社ディーラー研修会、電通・博報堂ワークショップや社内セミナー、日経新聞中国セミナー、三井住友銀行の中国ビジネス研修会などのセミナーや企業内研修の講師、ワークショップコーディネーターも多数務めている。