2009-11-06
http://www.chinabusiness-support.com/archives/2659
―北山:徐様は色んなメディアに取り上げられたり、連載もお持ちですね。「NIKKEI NET」では徐様が各界の著名人と中国というテーマで対談されていましたが、特に印象に残っている対談はございますでしょうか?
徐氏:「いい仕事してますね~」で有名な古美術鑑定家の中島誠之助さんや女優の大塚シノブさん、小説家の浅田次郎さん、歌手の谷村新司さんとの対談は特に印象に残っています。
私達ビジネスマンは日々仕事に追われていて現象を局地的に捉えがちなのですが、中島さんは歴史という物差しで物事を大局的に見ています。現在に囚われず何千年という視点からのお考えにはなるほどと感じさせられました。日本の心をよく理解しており、中国人とも真摯に付き合おうとする浅田さんや谷村さんとの対談は、面白い意見交換ができ、とても勉強になりました。中国人と日本人は顔が似ていて、同じく漢字を使いますが、行動パターンや思考様式にはいろいろな差異もある。それを知った上での誠実な交流が大切です。
それにしても、連載やコラムを書くのは意外と大変なんです(笑)。原稿と仕事の両立が難しく、どれも思い出に残っていますね。 ―北山:徐様は大連のご出身と伺いましたが? 徐氏:大連出身です。大連は港町なので魚料理が有名ですが、東京にもない美味しい魚で作った実家の食事が一番のホームシックです。
―北山:いつ頃から日本と接点が出てきたのでしょうか?ご経歴を教えて下さい。
徐氏:私が学生時代、当時80年代は“japan as No,1”の時代でした。今後の中国の為にも高度成長を成し遂げた日本から学ばなければと思い、日本語を勉強し始めたのがきっかけです。
私は北京外国語大学で教師を3年間務めた後、文部省奨学金で日本に国費留学させて頂き、立教大学博士課程で博士号を取得しました。また、博論を取り組むかたわら労働省の下部組織である日本労働研究機構(現、独立法人労働政策研究・研修機構)にて研究員として働いていました。
当時は、中国は日本にとって現在のようにマーケットというよりもまだまだ生産拠点という時代でした。日本労働研究機構では中国での賃金や雇用関係、労働組合とのつきあい方等の人事労務・法律情報の提供及び北京や上海での業界・市場調査を行っていました。
博論時代も年中中国で現地調査をしていたが、その経験が買われ、日経リサーチに入社致しました。そこで始めて中国の市場調査・マーケティングに携わりました。当時は自動車がメインでした。現在は中国は世界一の自動車市場ですが、その頃中国を市場として捉えている企業はまだ少なかったです。自動車メーカーは5年後・10年後を見据えて生産計画をしますので、中国を市場として捉えていたのだと思います。
―北山:来日後も常に中国を見続け、一貫して対中国のコンサルティング、マーケティングリサーチを行ってこられたのですね。
徐氏:私は日本に来て日本企業に就職しましたが、ビジネスフィールドは一貫して中国です。日本企業に所属しながら年中北京・上海・大連・成都等に出張し調査を行っていました。自動車以外には、家電や飲料食品関連も担当し、その後、キャストコンサルティングの代表取締役を勤め、企業規模や業界問わずあらゆる分野の中国戦略コンサルティング・マーケティングを行いました。
―北山:現在の会社に移られるにあたってはどのような想いがあったのでしょうか?
徐氏:より良い形で中国ビジネス支援を提供し、クライアントに更に満足頂ける様な仕事をしたいと思い今の形にしました。株式会社中国市場戦略研究所という日本法人と、上海伝沐商務諮詢有限公司という現地法人を上海に持っています。会社の方向性に賛同頂き、かつての所属先「日経リサーチ」創業者などの経営者先輩に取締役になってもらったりアドバイスを仰いでいたりしています。
―北山:著書を拝見させて頂きました。敢えて変な質問をさせて頂きますが、徐様はなぜそんなに中国市場に詳しいのでしょうか?
徐氏:中国人だから中国を知っているとは限らず、日本人でも中国人より中国に詳しい方もいますね。私は日本で社会学、経営学、経済学と多面的に勉強して身に付けた知識や視点で中国を再び見つめ、時には実際に中国現地にある消費現場や消費者の自宅まで訪問して購買に対する価値観や行動様式を徹底的に調べ、成功企業の徹底したベンチマークなどの仕事を通して中国市場を数量データのみでなく、深く理解する事ができたのだと思います。
―北山:御社のサービスはどのようなものがありますか?
徐氏:中国市場調査から戦略立案、販売支援までを行なっています。
弊社のポリシーは“とことん現場主義”です。調査をする目的は何でしょうか?中国市場で成果を出す事です。その為には単にデータを集めただけの奇麗な分厚い資料を高いお金をかけて作るような「調査の為の調査」では意味がありません。中国人の生活・実地に基づいた調査をしっかり地道に行なう事が大切です。チャネル販売現場にも足を運んだり、競合他社も調べます。暑い夏でもタクシー使わずに足を使って現場でリアルな市場動向を掴む事が成否を左右します。それがあって始めて自信を持って進出提案ができるのです。
―北山:中国での市場戦略は最初に大切な事はなんでしょうか?
徐氏:まずは、先入観を捨てることです。日本の場合はという考え方を捨て、中国の場合はという正解を見つけるべきです。一番大切なのは自社の商品が中国で売れて、利益回収ができるかどうかです。いくらお金をかけて立派な企画書を作っても、実際のニーズに即していなければ2年、3年たって利益が出ず、中国事業はストップになります。
正直、大手コンサルティング会社の理論はあまり好きではありません。理論で成果がでるわけではないからです。
変化が早い中国市場ですが、頭を空にして、じっくり見つめると自然と答えが見えてきます。
―北山:なぜ調査やコンサル以外に実務も行なっていらっしゃるのでしょうか?
徐氏:調査やコンサルの結果に自信があるので、実務面でもお手伝いするんです。徹底的な市場調査を行なうと、その商品が中国で売れるには何が必要かは私達が一番よくわかります。結果報告や提案だけで終わると、クライアントも面白くありませんし、私達もすっきりしません。
調査後の具体的な実務としは、中国でのセミナー開催やコミュニケーション支援や販売代行、代理店との交渉等を行なっています。最近、やはり増えるのは、ネットなどを使った顧客囲い込みや販売戦略ですね。
日本の商品は本当に品質が一番高いです。本当はもっと売れても良いはずなんです。しかし、日本は良い商品は売れるという独自の考えもあり、中国市場でのアピールが上手ではありません。また、技術者のエゴで実際のニーズ以上にいろんな機能が付き過ぎている事もあり、消費者サイドに立っていない事もあります。
―北山:中国に進出する日本企業が成功する為には何が必要でしょうか?
徐氏:まず、日本人同士の壁を乗り越えなくてはいけません。中国に進出している日本企業はまだ中国でどう売るかについてノウハウを持っているところは少ないです。それは日本企業が中国に進出したにも関わらず、同じ日本企業のみを営業対象としているからです。
―北山:中国内の日本企業の求人でも日本企業に対する営業職の募集を良く見かけますね。
徐氏:中国人や中国企業を相手にするのは危険だという理由で逃げてきました。せっかく中国にいるのにこれはもったいないことです。
もう一つ、中国市場では韓国勢が携帯電話や家電等の分野で日本よりも後発にも関わらず善戦しています。日本がなぜ負けているのか、答えは“根拠の無い変なプライド”にあります日本はなぜか未だに中国を目下に見て、全て上から目線で中国市場を見ています。それが全ての判断ミスや中国の一般消費者の反発は招きます。「日本人はなぜか中国を目下に見ていて、一番良い商品を中国に持ってこない。誠意を感じられない。」と思われてしまいます。
日本から中国支社に派遣される社員も、一般の中国人社員と大きく隔たりのあるような高額の待遇で中国に駐在しています。(今は大分減ったと思いますが)今の日本には、以前のソニーの盛田会長がたどたどしい英語でアメリカに渡り、ウォークマンを流行させたような気概が感じられません。
―北山:最近、中国では成功する日本企業も増えてきていますよね?
徐氏:ダイキンやDHC等、日本企業の古いやり方を辞め、新しい斬新なやり方でビジネスを展開する会社が中国で成功し始めています。今後更に増えると思います。
ただし、他の企業のやり方を盲目に追随するようなムードはどうかと思います。会社や商品ごとに戦略は必然的に異なるので、自分に適したやり方を冷静に分析することが求められます。
成功している企業は基本的に黙っています。日本企業の中には失敗事例が気になり、一歩進んでみては一歩戻り、足踏みするという企業があります。国内でも海外でも100%成功はあり得ませんので、失敗事例の分析も重要だが、成功事例もきちんと知っておくべきだ。
―北山:御社は日本橋ですが、お休みの日はどのようなところに行かれるのですか?
徐氏:銀座や渋谷・表参道、上海でも繁華街に良く行きます。日本や中国の消費の現場でどういう商品が売れてるとか常にチェックしてしまいます。職業病ですね。(笑)
今年(09年)11月に、待望の最新刊『中国人に売る時代~巨大市場開拓の成功法則』が日本経済新聞出版社から出版されます。
株式会社 中国市場戦略研究所
上海伝沐商務諮詢有限公司
代表取締役 徐向東様 所在地:103-0005東京都中央区日本橋久松町9-12 和円ビル7F
電話番号:03-5651-8106
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