2014-01-23
■ついにやってきた、1億の中国人が世界でショッピング!
今は世界の経済情勢が芳しくない。そんな中、実は救世主として各国から期待されている人たちがいます。それは、中国からの観光客です。私は何年も前から、1億人の中国人観光客が世界各地でショッピングする時代がやってくると言っていますが、ついに今年、現実になりそうです。昨年(2013年)、海外に訪れる中国人観光客が延べ9,700万人。中国政府の予測では、今年(2014年)、この数字は延べ1億1,400万人になります。まさに日本の全人口に相当にする中国人が世界各地で旅行するというわけです。
中国人が集中的に海外旅行に出かける時期といえば、やはり毎年の「春節」です。春節は、旧正月、旧暦新年のことです。「春節」には1週間ほど連休があります。毎年、中国国内で一番消費が盛んな時期。世界各地が「春節」を狙って、中国人観光客誘致を競い合っています。その一例となるケースがあります。一昨年12月に公開された、タイを舞台にしたコメディー映画「ロスト・イン・タイランド」が中国で大ヒットしました。この映画は中国版「男はつらいよ」のようなシリーズものですが、現地ロケにはタイ政府も協力しました。そのおかげで、タイ旅行が中国で大ヒットし、去年(2013年)、タイに訪れた中国人観光客が470万人という記録的な数字になりました。
今年は午年で、春節がいつもより早く来週1月31日にやってきます。そして1月30日から2月7日まで1週間ほど連休が続くのです。所得増、人民元高などの要因に加えて、各国の中国人観光ビザ取得の簡素化などの理由により、今年の春節には、中国人の海外旅行はいつもより熱を増しています。海外ツアーの価格もどんどん値上がりしています。私の後輩が中国の大手旅行会社で海外旅行ツアーの部門長をやっているが、彼からの情報だと、今年は特に日本と韓国の人気が高く、ツアー料金もいつもより3~5割高くなっているとのこと。米系旅行情報サイト「トラベルズー(TRAVELZOO)」昨年11月末~12月中旬に、中国で約700人の平均年収5万ドル(約520万円)以上の中国の富裕層に、
行きたい海外旅行先の調査を実施したが、29%の人が一番行きたい国として、「日本」を選んでおり、他国を抑えてダントツトップになっています。安倍首相の靖国神社参拝の前に実施した調査とはいえ、中国では特に富裕層の中で、日本の人気が高いことがわかります。
円安も中国人の訪日旅行の拡大要因になっています。昨年(2013年)、円はドルに対して約22%も安くなり、元と円の為替レートは、昨年ではまだ1元=15円台だったが、現在、1元=17円台に突入しています。今の中国人にとって日本国内の商品は何でも安く感じるのです。
中国人観光客は購買力の高さで知られています。国連世界観光機関(UNWTO)の統計によると、2012年の中国人観光客の海外での消費額が1,020億ドルに達しています。中国国内の「中国経済網」の統計によれば、国別にみると、中国人観光客は日本で一番お金を落としています。2012年に日本で、一人あたり1日1,731ドルも使っているのです。日本政府観光局の昨年(2013年)の調査をみても、中国人観光客の訪日1回当たりの平均消費額は約20万円弱で、他国の観光客よりはるかに消費力が高い。
今は、世界各地があの手この手を尽くして中国人観光客を誘致しています。例えば昨年(2013年)にロサンゼルスに訪れた観光客は4,220万人になりましたが、特に中国人は2012年より21%も増えています。それはロサンゼルスが、ネット上の中国語による観光情報発信や、ハリウッド、ディズニーランドなどの観光スポットを使って中国人向けのイベントを積極的に展開していることが要因の一つと思われます。
韓国も春節の中国人観光客誘致に相当な力を入れています。スキーや温泉、そしてショッピングを楽しんでもらうほか、整形手術を受けるサービスなど、韓国ならではの付加価値も積極的に提供しています。
昨年(2013年)末に中国の「旅遊法(旅行に関する法律)」が改定されました。従来は団体ツアーの場合、ガイドによって紹介された店舗で買い物を行うのが一般的だったが、今後は旅行者が自由に店舗を選ぶことが可能になりました。これは日本の小売業にとってはまさに朗報です。日本政府は「外国人観光客年間1,000万人誘致」の目標を掲げていますが、実は、中国人観光客への対策がまだまだ十分とはいえない状況です。
皆様の会社も、来週の春節、そして今後における、中国人へのアプローチをきちんと進めていらっしゃるでしょうか。弊社は2011年に『中国人観光客を呼びこむ必勝術』(日刊工業新聞社)を出版しました。一昨年、訪日の中国人観光客の旅行に同行する「行動観察」調査を日本の調査機関と一緒に実施しました。今年は日経産業地域研究所に協力して、「中国人に人気の日本国内販売商品」の調査をしており、その結果は「日経消費インサイト」2月号(2月10日発売)に掲載される予定です。今後は、中国人向けの調査や戦略立案と実行について、ぜひご協力させてください。
(弊社上海現地・徐蝶などの情報収集より)